この記事の要点:飼料は原物1kgの価格や見た目だけで比較できません。水分を除いた乾物量を基準に、エネルギーの目安となるTDN、粗たんぱく質のCP、繊維のNDFなどを確認します。ただし分析値が同じでも、粒度、加工、嗜好性、カビ、保管状態で牛の反応は変わります。
飼料成分表を読む目的
飼料成分表は、牛の成長段階や生産目的に対して養分が不足・過剰にならないよう設計するために使います。農研機構の日本飼養標準は、成長や生産量に応じた養分要求量を示す国内の基本資料です。
主要な指標
| 指標 | 意味 | 実務上の見方 |
|---|---|---|
| 水分 | 飼料に含まれる水 | 保管性と実際の養分量に影響 |
| DM(乾物) | 水分を除いた部分 | 異なる飼料を比較する土台 |
| TDN | 可消化養分総量 | 利用可能なエネルギーの目安 |
| CP | 粗たんぱく質 | たんぱく質供給の大まかな指標 |
| NDF | 中性デタージェント繊維 | 採食量、反すう、物理性に関係 |
| ADF | 酸性デタージェント繊維 | 消化性を考える参考値 |
原物表示と乾物表示
水分50%の飼料は、原物1kg中の乾物が0.5kgです。水分10%の乾草は原物1kg中の乾物が0.9kgです。同じ原物価格や同じ給与重量でも、牛が摂取する養分量は大きく異なります。
乾物量=原物重量×乾物率
乾物1kg当たり価格=原物1kg当たり価格÷乾物率
TDNはエネルギーの目安
TDNが高い飼料は一般にエネルギー供給力が高いと考えられます。ただし、同じTDNでもでんぷんの発酵速度、脂肪、繊維の消化性が異なり、給与方法によってルーメンへの影響も変わります。
CPは多ければよいわけではない
CPは窒素量から推定する粗たんぱく質です。必要量を超える給与は費用増加につながり、利用されなかった窒素の排出も増えます。たんぱく質の分解性やアミノ酸供給まで考える場合、CPだけでは不十分です。
NDFと「物理性」は同じではない
NDFは繊維量の指標ですが、長い稲わらと細かく粉砕した繊維原料では、同じNDFでも反すうへの作用が異なります。切断長、硬さ、選び食い、採食時間を現場で確認します。
分析値と現場観察を組み合わせる
- 乾物摂取量と残飼
- 反すう、糞の状態
- DGと肥育日数
- 飼料切替後の採食変化
- ロットごとの臭い、発熱、カビ
飼料費への換算は肥育牛1頭当たりの飼料費はどう計算する?、粗飼料の比較は牛の粗飼料とは?をご覧ください。
よくある質問
成分表の標準値だけで配合できますか?
概算には使えますが、産地、品種、収穫時期、加工、保管で変動します。重要原料は実ロットの分析が有効です。
乾物率は毎回同じですか?
特にサイレージや食品副産物は変動します。原物重量だけで管理すると摂取養分がずれるため、定期的に測定します。
TDNが高い飼料ほど良い飼料ですか?
目的と牛の状態によります。エネルギーだけでなく、繊維、たんぱく質、ミネラル、採食性を含む全体設計が必要です。
参考資料
本記事は一般的な情報です。具体的な給与設計は飼料会社、獣医師、普及指導機関等へご相談ください。